古川設計室による伝統構法の家づくり

熊本の杉の木のQ&A

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熊本の杉の木についてのQ&A

Q 環境のためには、針葉樹より広葉樹を植えた方が良いと言われていますが。
A 針葉樹が良いか広葉樹が良いかという議論が良くなされますが、問題は広葉樹の育成を誰が行うかということです。広葉樹と針葉樹を混植し、樹木下まで光が通るようにしてコケが生える状態を作るのが理想でしょう。広葉樹育成はお金にならないので民間での育成は難しいのです。税金を使ってなら可能でしょう。戦後の拡大造林計画のツケを山林所有者に押し付けるのは酷な話です。原始林に人間が一度手を入れてしまったら、ずっと手をいれなければなりません。
Q ではどうしたらよいでしょうか。
A 山を一律に論ずることはできません。産業として成り立つ針葉樹を間伐伐採し、風と光が通るようにすれば、自然に広葉樹と下草が生えてきます。そして針葉樹と広葉樹の混合林が生まれることになるのです。急斜面の山の場合は搬出手間がかかるので、皆伐し植林が良いと思います。                   
Q 杉の木を間伐しますが、最初から間を空けて植えれば良いのではないでしょうか。
A 稲作の田植えと同じ原理で、まず1haに3000本植えます。そうすると、樹木間に競争がおこります。育ちや癖の悪い木を間伐し、良い木を残します。最終的に1000本の優良木を取るのです。吉野地方では6000本植えますので間伐手間は相当なものです。それで吉野杉は目細な材が多いのです。                    

針葉樹・広葉樹・下草の混合林

同じ時期に植えたのに大きさにかなりの差がでる。自然界にも勝ち組と負け組みがある。
Q 九州の杉が黒ジンが多いのはどうしてですか。
A 九州地方は高温多湿で物が腐りやすく白蟻も多いので、樹木自ら身を守ろうとするためタンニン成分が特別多いのです。その成分は黒っぽく、黒ジンと表現します。特に南の地方の杉の木に多いようです。防蟻性は高いのですが、水分が抜けにくいという欠点があります。
Q 地元で建てるなら地元の木が良いというのはなぜですか。
A 木にはその土地の自然環境に適応した性質があります。白蟻が多い地方の木は防蟻性のためタンニンが多く赤か黒っぽいのです。同じ杉でも、秋田杉は色が薄くピンク色をしています。白樺の木が白いのは白蟻を知らないのでタンニンの必要がないからです。熊本のような高温多湿地方において、色白の北欧の木を使う場合は、薬剤による防虫加工が必要なのです。
Q 日本の木は曲がりが多く、外国の木は曲がりが少ないというのは本当でしょうか。
A 本当です。日本は海からすぐ山へと続いていて急斜面です。外国は大陸なので山といってもなだらかで丘みたいなものです。木は光に向かうので、急斜面に植わっている木は根元から曲がり上に伸びます。根元部分は曲がっていてもその上は直材です。日本の建築技術はそのことを欠点とは考えません。曲がった部分は梁に使い、真直ぐな部分を柱として使うのです。
梁・柱共、直材を使うプレカット工法にとっては不都合なことです。
Q 新月に伐採した木にはシロアリがつかない、反らない、ヒビも入らないといわれていますが本当でしょうか。
A 新月伐採は冬季に伐採し、谷川に倒し8ヶ月間葉枯らし乾燥するので、白太部分が赤身化し、虫が付きにくくなるとの研究結果があります。新月という伐採時期には関係がなく、葉枯らし乾燥にその効果があるようです。3~5月に倒木に虫が入りやすい日本では8ヶ月間の葉枯らし乾燥は現実無理な話。外国の一例を日本に持ち込むのはいかがなものでしょうか。
 写真は比較:満月に切った木と新月に切った木を土に埋めて実験します。9月に報告。
Q 杉の木にも種類があるのでしょうか。
A 熊本には10種類あります。アヤ・ヤブククリ・メアサ・シャカイン・マスギ・等です。それぞれに特徴があります。
Q 寿命の長い木はなんでしょうか。
A 世界で寿命が一番長い木といえばなんといっても屋久杉です。縄文杉は推定3800年と言われています。しかし屋久杉は伐採禁止なので入手不可能です。
製材品で強度低下が発生する時期は、檜は1000年、杉は600年程と言われています。ケヤキなど広葉樹は400年です。もちろん虫害や腐食が無い環境に置いた場合でのことです。民家再生で、古材が100~200年経過していても強度低下は無いといわれる理由です。
Q 木材の梁の大きさを決めるとき、材のたわみで決めます。たわみは木材のヤング率で決定されます。杉のヤング率はE50~90です。ベイマツはE90を超えています。数値だけで考えるとベイマツが良いように思えるのですが。
A 梁として使用するとき、杉は60年生を使うので心持ち材。ベイマツは大径木なので心去り材になります。心持ちと心去りでは心去り材の方が材の収縮率は大きく、材収縮分を含めた材のたわみ量ではベイマツの方が大きくなります。結果として、杉E70材とベイマツE90材は同じ程度ということになります。数値だけに惑わされないようにしましょう。
Q 平角材と太鼓と丸太の強度差を教えて下さい。
A 辺材の皮目辺りが引っ張り強度は高いので、曲げ強度やたわみに関して丸太が一番強いとなります。平角材を1.0とすれば太鼓梁は1.1、丸太梁は1.2となります。伝統構法において、梁に太鼓や丸太を使うのは賢い使い方です。
Q 木材の中心部と辺材ではどちらが強いですか。
A 樹木の強度原理として、風に対抗するために辺材部には引っ張り力が発生し、その部分は強くなります。又、自分の重さを支えるために中心部は圧縮強度が高くなっています。中心部を芯材、周辺部を辺材と呼びます。建築の柱に圧縮力だけを負担させるのであれば、芯材が良いとなります。しかし、伝統構法では柱に圧縮力・曲げ力・せん断力を負担させるので、バランス良く芯材・辺材を含んだ芯持ち材が良いことになります。100年以上の木から4寸角を取ることは強度的に良くありません。高級住宅ではヒビを嫌い、バランスを崩した木取りが行われていますが好ましくありません。
Q 年輪の目が粗い木は弱いのですか。
A 目が粗くても密でも曲げに対する強度は、実験によると同じだそうです。大工さんは目が細かい方が強いと言いますが、ヤング率以外の要素であろうと。まだ解明されていません。
Q 集成材が強いと言われています。本当でしようか。
A 杉のヤング率はE50、E70,E90とバラバラです。無垢材として使う場合は最低強度で表現するのでヤング率はE50となります。集成材は木材をミンチ状に加工し、接着剤で貼り合せるので強度は平均のE70になります。よって集成材の方が強度は強いという表現をする人もいますが、家全体で比較すれば同じことです。熊本には本物の無垢材がたくさんあるのに、数字のマジックで集成材を使うのは賛成できません。ステーキ肉をミンチにしてハンバーグにするようなことです。
Q ヒビがはいれば木材の強度はどれくらい弱くなるのですか。
A 杉の木600本の強度実験がなされています。曲げ強度・圧縮強度共、ヒビがある方が若干強度が高い結果となっています。硬い木の方が高強度である。硬い木の方が、ヒビがはいりやすい。よって、ヒビがある方が強度は高い結果になっています。木材を、鉄線を束ねた電線と考えてください。鉄線の束ねが少々離れたからといって強度低下は考えられないでしょう。集成材は違います。集成材が長手方向の接着面の剥離が発生することがあります。鉄線の一本が切れることと同じで強度低下は著しいです。構造材には使わないことです。無垢材が熊本にはたくさんあるのですから。

写真は強度比較:ヒビが多いほど強度が高い。

Q 杉に漆喰が付けば黒くなります。どうしたらよいでしょうか。
A 漆喰は強アルカリです。杉のタンニンと反応して黒くなります。酸性の物、酸っぱいミカンの皮を剥いて置いておくと黒さは消えます。そのまま放置しておいても1ヶ月で元に戻ります。
Q 金物で補強した建築は強いと言う人がいますが本当でしょうか。
A 紙をホッチキスで留めるのとコヨリで留めるのはどちらが良いでしょうか。長期保存が必要な裁判資料はコヨリで留めていました。ホッチキスが錆びれば強度は著しく低下します。
Q 葉枯らし乾燥は良いことでしょうか。
A 杉の木は自分の体重の倍くらいの水分を含んでいます。春季は含水率200%くらいですが、秋季には150%~120%に落ちます。秋季に伐採し、葉をつけたまま乾燥させると90%くらいに落ちます。ただし、間引き伐採では立ち木の葉で光が入りにくく、葉枯らし乾燥させても乾燥効果はありません。皆伐の場合、有効な乾燥方法です。
Q 人工乾燥はヒビが入りにくいとは本当でしょうか。
A 自然乾燥は餅にヒビがはいるのと同じく表面にヒビがはいります。人工乾燥は内部にヒビが入るので外から見えにくいのです。伝統構法の場合は材木の中心を加工しますので外部割れより内部割れが問題です。杉のように含水率の高い木は半分以上が水分なので、重油を使って乾燥させること自体が問題です。木材は15000円・M3ですが,乾燥費用が15000円/M3かかります。
Q 森林認証制度を国が進めています。「熊本の山の木で家をつくる会」では採用しないのですか。
A そもそも不法伐採が多い欧米で提唱された制度です。1本1万円もしない木を盗む人はいません。杉の木は全て日本産です。菊池米を日本の米ですよという証明はいりませんし、直接山主から購入するのに認証してもらう必要はありません。その認証費用を誰が負担するのでしょうか。紙代と検査員の給料に消えるだけです。日本における不法とは、皆伐したら植林をしなさいという「森林法」を守らない人が多いことです。この不法取締りは全く行われていません。持ち主はわかっているのですから、検査員はこちらの取り締まりを優先すべきではないでしょうか。
Q 山に竹が多くなってきました。
A 深刻な問題です。竹は食用、海苔養殖材、生活用具材として、家の裏に植えていました。竹は根が浅く横に広がり、降雨を最初に採取するため、他の木に水分が行かないのです。昔は竹と人間は共存していたのですが、今は人が竹を見捨てたため逆襲を受けています。そして竹の根は浅いため保水力が無く地すべりも起きやすいのです。そして、税金をつかっての土木工事が必要となるでしょう。一番深刻な問題ですが手付かずです。

日本で熊本は禿げ山が多い。禿げた部分にはいずれ竹が生える。

山のテッペンまで竹が伸びている

 

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